地明かり 澄みわたる蒼天のもと蔓草のつる垂れてをりなかば枯れゐつ 昼の月うかびゐるさま存念のそとのことなりわが曵くかげも 放恣にも似たるちからに噴水の迸りをり ひかりあるなか 雨のやみ地明かりさせば身のうちにほのか揺れ初む一穂の草 風あらむ薄雲いつか失せてをりこころに湧ききゐし想念もまた 風てふは畢竟こずゑのさやぎなりこころ過ぐればいかなるさやぎ みづ浅くながるる川に沿ふ歩みおのが影より冷えのぼり来ぬ おのがじしいのちの光をまとひけり 白菊なれば白きひかりを ゆくりなきうなじの火照りにふり向けば石段に陽のさしゐるばかり 陽のひかり受くる歓喜の須臾なるもこのうつしみは花片のたぐひ 冬うらら花ひひらぎの零れをり思ひ遂げたるのちのごとくに ゑのころ草ひそか揺らせる西風にちちははの霊魂はこばれてゐむ とほき日に祖母が焚きゐし枯れ菊のけぶりのゆくへすでに隔り世 あなたなる夕映え額におよびをり「帰去来」てふ語のおもひ出て 空と地のひとつに溶け合ふくうかんをひかりと言はむ真闇と言はむ 「砂金」2005 4月号 巻頭詠 |
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